はじまる


つきささる陽射しと 
壁に焼きついた影と 
電線のカラスと 
のろしをあげる煙突と 

毛先の広がった歯ブラシと 
絞りきった歯みがき粉と 
吊るしたままのバスタオルと 
籠のなかの洗濯物と 

焦げかけたウインナーと 
バタートーストの香りと 
作り置きの煮物と 
大忙しの電子レンジと 

不祥事を知らせる新聞と 
安売り競争のチラシと 
きっと使わないクーポンと 
今月のヘビーローテーションと 

履きつぶしかけのスニーカーと 
生乾きの折りたたみ傘と 
コンクリートに咲くタンポポと 
季節を運ぶやわらかな風と 

かわりばえしない、またとない一日。

散文で綴る生の断片

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